Dreamdancer - 更新終了

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「双翼の独奏歌」コミュは最高だったという話

【注意】この記事は、2017年8月21日からデレステ内で開催されているイベント「双翼の独奏歌」のネタバレを大いに含んでいます。まだコミュを見ていない方・ネタバレを目にしたくない方はご注意ください。またこの記事は神崎蘭子担当P・二宮飛鳥担当Pではない一モバマスPによるコミュの考察記事であり、この解釈を蘭子P、飛鳥P、あるいはデレステPやモバマスPとしての統一見解にするべきと主張するものではありません


超仰々しいスポイラーアラートから始まったこの記事ですが、言いたいことは単純で、すなわち「双翼の独奏歌」のコミュは最高だったということです。蘭子や飛鳥に対して嫌いではないものの特段特別な感情(要するに担当Pである意識とか、ファンである意識のこと)を持っていない私としては、このコミュは非常に濃く高いレベルでアイドルの成長と交流を描いていたように思います。一方でツイッターではこのコミュのことを悪し様に言う人も一定数おり、またそのような人がいることによってコミュを読む前から(以前の実績もあいまって)「双翼コミュは悪い内容のコミュである」と決めつけて掛かっている人も少なくないように感じています。*1そのような状況の中で、ここらで一発双翼コミュを評価する立場からどこをどういうふうに解釈して良いと思ったのかについて詳しく述懐する必要があると感じ、この記事を書くことを決めた次第です。

前置きはこのぐらいにして、早速コミュの内容をなぞっていきましょう。

0: 前提条件として飛鳥と蘭子は互いに互いが好きである

今更こんなことを大々的に解説するのもおかしな話ですが、2人の関係を論じるにあたって重要なので触れておきます。デレステで分かりやすくこのことが表れているところと言うと、やはりデレステのストーリーコミュ第43話でしょうか。流石にこの記事を読んでいる人なら既にこのコミュも既読だと思うのでネタバレありで進めますが、要は飛鳥がいろんな人達と会っておしゃべりをするという流れで、最後に会うのが*2蘭子だったという話でした。

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蘭子は夜の公園で飛鳥と落ち合うのですが、合流時点で既に公園の閉園時間が迫っており、結果的にあまり長く飛鳥とおしゃべりをすることはできませんでした。それでも蘭子はその僅かな時間を飛鳥と共有したくて(恐らくフレデリカや企画者と多少の打ち合わせをして時間を見計らっていたかもしれないけれども)夜の公園で待っていたし、またそのことを知らされた飛鳥は蘭子に詫びています。カメラが回っている企画の流れとして蘭子を待たせることになったのだから、飛鳥に非があるわけではないわけですが、それでも蘭子が待っていたならばすぐにでも飛び出して行きたかったという気持ちがそのまま表れています。

私が非蘭子・飛鳥Pであるという事情もあり、手っ取り早く見つかる蘭子と飛鳥の仲睦まじい例はこのコミュとなりましたが、このコミュだけに限定しなくても蘭子と飛鳥が互いに意識しあっていて、好意的な感情を互いに向けているということは明らかでしょう。それこそモバマスでの「ダークイルミネイト」としてのイベント登場時の台詞等を読めばすぐに分かることかと思います。しかし、だからといって心の底で蘭子と飛鳥が100%相手の何たるかを理解していたかというとそういうわけではなく、またそこが今回のコミュの重要なポイントとなります。

このあたりから実際に今回のイベントのコミュについて触れていきます。ネタバレにご注意ください。

1: 蘭子は飛鳥のことを理解らないし、飛鳥も蘭子のことを理解らなかった

ここから今回のコミュの内容に触れていきます。まずオープニングですが、そもそも公式がスキップあらすじでも明確に指摘している通り、飛鳥が蘭子のことを端的に「中二病」と形容したことから波風が立ち始めます。中二病という不本意で杓子定規な表現に自らを押し込められたことについて、蘭子は明確に不満であることを表情に出していますし、またプロデューサーもそのことに気付いています。

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一方で、実は蘭子の側も「中二病事件」よりも前に飛鳥に対して少々まずいアクションを起こしています。蘭子は自らの“幻想語”を駆使して飛鳥のことを表現しますが、その内容に対して飛鳥はピンときていない様子を見せています。その後インタビュアーにざっくりと「詩的」という心地よい表現に言い換えてもらったことから、飛鳥がこれといった反発を見せることはなくその場は収まっていますが、実際のところ糖衣にくるんだ言葉で相手に思いを伝えられなかったことは蘭子側のコミュニケーションのミスであると言えると思います。

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結局オープニングは蘭子が持ち直したことでつつがなく終わります。しかし、飛鳥の言葉が不意に刺さったことから蘭子は飛鳥との関係について疑問を抱くようになります。これは1話でベテトレに話しかけられた段階ではまだうっすらとした思いのため、言われて初めてなんとなくそうかも……と思う程度でした。実際、「お前たちは全然違う人間だ」とベテトレに指摘された時点では、蘭子も飛鳥も全くその意味するところを理解してはいません。その後、プロデューサーに「このままでいいのか?」といつになくシリアスな問いを投げかけられて初めて、その違和感が自分たちの課題であることに気付くわけです。

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一方飛鳥は「甘えるな」という突き放すような台詞をプロデューサーに投げかけられ、さらには蘭子から「あなたの言葉がわからない」という、プロデューサーの「理解ってもらえると思うのは甘え」という言葉を体現したような宣告を受けてしまいます。その結果、飛鳥は自分にとって心地よいサンクチュアリだった事務所から逃げ出してしまうという行動を取ってしまいました。

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今回のコミュで賛否両論になっているのはこの部分で、「蘭子と比べてあまりにも幼稚に見える」という見方にも取れるのが問題であるというふうに理解しています。

しかし、私としては飛鳥が特段幼いように描かれているとは思いません。蘭子と飛鳥はそれぞれ別個の問題を抱えており、その発露の仕方が異なっただけであると考えています。すなわち、蘭子の問題は思っていることを伝えられないこと、そして飛鳥の問題は思ってもいないことを言ってしまうことですが、蘭子は思っていることを伝えられなかった*3結果相手に理解してもらえず目の前から去られてしまい、飛鳥は思ってもいないことを言ってしまった結果相手から拒絶され居場所をなくすという帰結があった、ということです。これはどちらが幼いということではなく、互いに抱えていた問題が悪い意味で噛み合ってしまったということなのだと思います。

さて、コミュのどこが良いということを語るというよりもコミュの解説みたいな内容になってしまいましたが、このコミュのミソは「蘭子と飛鳥は全く違う存在であり、それゆえ互いを理解することもできていないということを蘭子と飛鳥が自覚できたこと」だと思います。このことを端的に表しているのが次の2つの台詞です。

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上の画像の蘭子のように、「近しき領域に住まう眷属同士だから」という理由だけで互いに依存し合う関係では、ユニットとしての先はない。そのことにベテトレさんは気付いていて、またプロデューサーもこの馴れ合いの否定とその後の衝突から蘭子と飛鳥が成長することを期しているという、ある種の「種まき」としては若干ショックが強すぎると思われる可能性は残っているものの、よく2人を描いたコミュだったのではないかと思います。

2: 飛鳥の彷徨と自問自答、カッコいいじゃん

飛鳥は事務所を飛び出し、(たぶん)渋谷あたりを当てもなくさまよい始めます。ここでいろんなモブたちに出会ってひとりごちるわけですが、順を追ってモブたちとの出会いを振り返ってみましょう。

モブA:飛鳥をボクっ娘呼ばわりするチャラ男

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まず、今回のコミュで最もプロデューサー各位の殺意を買っているモブことチャラ男の2人です。個人的な意見ですが、たしかにこのチャラ男たちは不快な存在ではあるのですが、このコミュには必要な部類の存在だったと思っています。理由は単純に「自分のアイデンティティに対して理解のない触れ方をされると不快である」ということを飛鳥が学ぶためです。これは例えばそこらへんのおばちゃんに「あーたも女の子なんだから『ボク』とか言っちゃダメよ」と言われるとか、そのへんのジジイに「変な色の髪の毛はけしからん!」みたいな絡まれ方をするとか、まぁいろいろとシチュエーションの候補はあったと思いますが、その中でも明らかに相手が悪であり、また如実に教訓を理解しやすいものとしてはチャラ男がベターだったということなのだと思います。

モブB:ネチョネチョしたアベック

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次に会うのが、うすっぺらい愛の言葉を互いにかけあうアベックです。このアベックに対して飛鳥は「そんな言葉嘘ばっかりだ。どんな言葉を並べたって、お前たちは所詮一瞬交わって消えるだけの関係だ」とスッパリ断じています。このことはつまり、上辺だけの言葉じゃ真に魂の共鳴と呼べる関係にはなれない、すなわち「お互いに闇に住まう眷属とか言い合ってるだけじゃどうにもならない」ということを学んだということだと思います。

モブC:コンビニの店員

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その次に会うのが、コンビニで缶コーヒーを買う時にやりとりをした店員です。特にこの店員はおかしいことをしてるわけではないのでちょっとかわいそうだなと思ったり思わなかったりするんですが、飛鳥がはっきり要らないと言うまで缶コーヒーを袋に入れるかどうか聞いてきます。何か印象に残る言動をしてくるわけでもない正真正銘のモブにちょっとイラッとしながらも、飛鳥は「思ってることは言わなきゃ伝わらない」ということを理解したのではないでしょうか。

ちなみにこの記事の本筋とはちょっと離れるので詳しくは立ち入らないのですが、飛鳥は本来ブラックコーヒーすら飲めないキャラです。そんな飛鳥が「微糖のコーヒーを飲むような人間になったのは何故だ」と自問自答しているというのは非常に興味深いですね。

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モブD:ゲーセンの筐体たち

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やがて飛鳥はいつか立ち寄ったゲーセンに辿り着きます。そこで出会った、人間の人生の空白を埋めるためだけに作られたゲーセンの筐体たちに思いを馳せつつ、自分もまた空白を埋めていることに気付きます。ちなみに飛鳥くんは14歳(16歳未満)なので、一般的な関東圏のゲーセンであれば18時には入店が禁止されるため、当然ゲーセンの敷地内に足を踏み入れた瞬間に店員のお姉さんに追い払われることになります。そうして、逆説的にゲーセンという居場所=空白が人間によって埋められていること、あるいは誰かに自分の空白が埋められていることに気付き始めます。

ここまで約4組のモブたちと出会い、ついに飛鳥は以下のことに気付きます。

  • 自分は蘭子のことを上っ面だけ理解ったつもりになっていたこと
  • 自分は本当は蘭子のことを理解っていなかったということ
  • 自分は蘭子に理解ってほしいと思っていたということ
  • 以上のことは、蘭子と会って本心を直接伝えなければ伝わらないこと

さて、飛鳥は事務所を飛び出して彷徨しながら、これらのことを(モブという触媒の存在があるとはいえ)自力で気付いたということになります。私はこの飛鳥を見て純粋にすごくカッコいいなと思いました。最初に問題を起こしたのは自分であるという前提があるとはいえ、自分の中でさまざまなことを思い巡らせながらひとりの力で問題を解決に向かわせる糸口を見つけ出したという飛鳥を見ると、最早「14歳という年齢の割には……」という枕詞もいらないくらい人間として成熟しているような気がします。

3: 全て気付いた蘭子と飛鳥の答え合わせ

ここまでが第3話で、第4話からは蘭子と飛鳥による答え合わせが始まります。第3話では飛鳥の彷徨がメインで描かれており、蘭子が自らの内面でどのようなことを考えていたかは直接的には描かれていませんでした。*4蘭子はアナスタシアの助けも借りながら、相手(飛鳥)を傷つけないようなコミュニケーションを心がけてしまう自分、そしてその過程で隠してしまった「ほんとうの強い自分」を意識することに成功します。

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この後蘭子は事務所に向かうことになりますが、見た目が違うだけでやっていることは飛鳥のやっていたこととかなり近いように思います。つまり、飛鳥の方がいささかドラマチックな過程を描いてもらったとはいえども、飛鳥も蘭子もそれぞれの方法で問題の解決へ歩みを進めていることが見て取れるということです。

そんな蘭子が事務所へと駆け出した直後、入れ替わりに女子寮を訪れた飛鳥に対して、アナスタシアはこのコミュ全体の答えともなるようなフレーズを飛鳥に投げかけます。

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「言葉を信じず、心を信じる」──これがダークイルミネイトというユニットのあり方であると、このコミュを読み通して感じました。このアナスタシアの言葉の後は飛鳥と蘭子が自らの言葉で“答え合わせ”を行うという展開なので、特に説明は不要かと思われます。いやホント、そのやりとりの内容は「やっとついにここまで辿り着けたね……」という感動ものの内容なので、読者の皆様の手元の端末でコミュを読み、彼女たちの言葉をそのまま味わっていただきたいと思います。

とはいえ、クライマックスにも顕著な見どころはあるので2点だけ指摘しておきます。第4話、蘭子が「居るわ。ここに」と姿を現す直前の飛鳥の台詞です。

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この台詞、文字を読んだだけでは当然わからないのですが、飛鳥の声が震えているんですよね。事務所を飛び出す直前までは、プロデューサーに対する怒りや責める気持ちで満たされていた口調だったのに対し、ここではプロデューサーを責めているにも関わらず声が震えている。この言葉を吐きながら、飛鳥は彷徨しながら自問自答して築き上げてきた自分の気持ちを、蘭子への申し訳ないという思いとともにまとめ上げられたのだと思います。

それと最後、第5話のコミュのラストが飛鳥のストーリーコミュで2人が落ち合った公園と同じ公園だったのは良かったですね。

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まとめ

「双翼の独奏歌」のコミュでは、見た目上飛鳥が派手にブチ上げてしまったという側面はありながらも、実際のところ飛鳥だけでなく蘭子にも問題はあったと考えています。この問題の発露として飛鳥は街を彷徨うことになり、蘭子は自室に閉じこもることになるという、それぞれが異なる様子で問題に向き合っていく姿が描かれたのがこのコミュであると、私は思います。だから、実は飛鳥が特別に“ガキ”だったとは思っていません。飛鳥もまた(蘭子と同様に)悩めるティーンネイジャーだったという意味では“ガキ”だったのかもしれませんが、飛鳥の精神年齢が(蘭子たちと比べて)幼いという描かれ方ではなかったと思います。

また、私はこの記事の内容と同じ解釈を全ての人がしなければならないとは思っていません。当然違う人間ですから、同じコミュを読んでもその解釈は人によって異なってくるでしょう。しかしながら、今回のコミュの中で飛鳥がプロデューサーのことを「自分が何か言ったりしたりするたびに諸手を挙げて喜んでいた」と形容していましたが、この飛鳥Pの姿勢は間違ってはいないとも思います。

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このコミュを読んで自分の思っている飛鳥像と違うと思われた方も少なからずいるとは思いますが、コミュ中の飛鳥Pはなぜそのような態度を取っていたのか、ちょっと考えてみてほしいとも思っています。

最後に、「双翼の独奏歌」のコミュを読んだ感想として、私は二宮飛鳥というアイドルが読む前よりもかなり魅力的に見えるようになってきたし、そういう意味では飛鳥Pが羨ましくもあるということを表明して、この記事を締めたいと思います。


P.S.
あと限定蘭子と限定飛鳥ください

*1:念のために予防線を張っておくと、私はデレステのコミュが全面的に良い内容であると思っているわけではなく、例えば桃華のストーリーコミュなどは桃華というアイドルを描くにあたって失敗していたと感じています

*2:厳密に言うと最後はプロデューサーなわけですが、まぁアイドルとしては一番最後だったということで

*3:実際、夕方の事務所中庭のシーンでも、蘭子は飛鳥に真意を伝えられなかったのではないかと思っています。プロデューサーの「甘えるな」という言葉は自分たちには関係ないと主張する飛鳥に対して、蘭子は「飛鳥だけの問題ではなく、自分の問題でもある」ということを伝えたかったが、それを上手く伝えられなかった結果、飛鳥に自分が一方的に責められていると思わせてしまうという失敗を招いたということです

*4:多分20000pt報酬のSレア蘭子を取れば多少どのような内省があったのか知れるのでしょうが、まだ取ってないので勘弁してください……